
「イノベーションのジレンマ」という書籍をご存じでしょうか。
私もyoutubeで書評されている方の紹介でその存在を知り、一度読んでみたく思っていまして、Amazonで購入しました。
読み終えたので早速要約をしてみた次第です。
本書籍の内容をざっくり要約すると、「財務も健全、市場に大きなシェアを持ち、常に本業でよい成績を残している大企業」が「新しい発想のもとに開発された商品やサービスを持った新興企業」にあっさり駆逐されるということです。
もっと簡単にいうと、まじめで優良な大企業が今まで脅威でもなんでもなかった技術をもった新興の企業に市場を乗っ取られる場合があり、ほぼ不可避であるということです。
そんなことおこるのか?
大企業も「その新しい発想のもとに開発された商品やサービス」で稼げばいいじゃない?
なんでできないの?
こんな疑問がわいてきました。
これに対する解決策も、ハーバードビジネススクール教授であり経営者でもある著者クレイトン・クリステンセン氏は本書で述べています。
数々の著名な経営者も推薦する本書には、どのようなミステリーが隠されているのでしょう?
本記事では「イノベーションのジレンマ」の言いたいことを主観をもとに簡単にまとめました。
「大企業の倒し方」あるいは逆に「大企業の守り方」のヒントになるかもかもしれません。
その他にも、次の技術革新を予測し投資判断ができるようになるかもしれません。
「あれ、うちの会社やばいんじゃない?」なんて気付きを得るきっかけになるかもしれません。
是非最後まで読んでみてください。
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press
大企業が規模を縮小、倒産してしまう理由
他社との競争にやぶれるとか不祥事で信頼をなくす、雑な会計と無理な投資といったことがありますが、必ずしもこれだけが原因ではありません。
「持続的イノベーション」で技術力も競争力もあるまじめで優良な企業は技術革新をもとにした「破壊的イノベーション」によって企業規模の縮小、倒産してしまうことがあるのです。
持続的イノベーションとは
既存の製品やサービスを改良していくことです。
特徴として重要な顧客、株主、ユーザーを性能で満足させます。
企業としても利益の見通しなど予測と計画が立てやすく、大きな変化が不要な技術革新です。
破壊的イノベーションとは
従来の価値とまったく別の発想をもとに開発される製品やサービスです。
特徴として最初は既存の物と比べると性能は低く、シンプルで、低価格で、低利益。
なのでその新しい技術革新に価値を認めてくれる市場をみつけ開拓し、それに見合った企業規模から始まります。
「破壊的イノベーション」が大企業を追い詰める
冒頭で述べた「まじめで優良な大企業が今まで脅威でもなんでもなかった技術をもった新興の企業に市場を乗っ取られる場合があり、ほぼ不可避である」理由についてです。
大企業は「持続的イノベーション」を続けていきます。
ただ次第に、ユーザーにそこまでの性能のものは求めていない物が出来上がってしまう。
一方、「破壊的イノベーション」を持った新興企業があらわれて「持続的イノベーション」を続けると、今よりユーザー数も多い大企業がしのぎを削っている市場のニーズを満たしてしまうものが出来上がってしまう。
ここで、「破壊的イノベーション」であった新興企業が既存の大企業のシェアを奪って侵食していく構図になります。
その結果、まじめで優良な大企業は縮小、倒産するといったことが発生します。
「イノベーションのジレンマ」破壊的イノベーションに大企業が対応できない理由

大企業にとっては今の市場での競争力と利益の確保が最優先されます。
顧客からは今よりいいものを、株主からはもっと利益だせとプレッシャーをかけられる為です。
大企業は今の市場のために研究、開発、マーケティング、マネジメントといったコストを集中しているので、予測のたたない新興市場へは参入できない。
また企業内でも、予測のたたない新興の市場への進出は、社員の抵抗にあったりします。
6年から7年前を例にあげると、現在儲かっているパソコンメーカーの社員に、「今より少し利益が減るかもしれんけどスマートフォンとやらをこれから作って売るから担当者になれ」と経営者が言ったとしても「いやいや、今以上の売り上げだすのにそのスマートフォンとやらをどんだけ売ればいいのよ、左遷か(怒)」といった具合。
社員にとっては現在の収益モデルで大きな利益を上げて出世したいというを願望を、経営者に無理やり奪われたととらえられたりします。
経営者としては長期目線で「破壊的イノベーション」に危機感を感じて対応しようとしても、社内での抵抗により期待する十分な成果が得られない。
これが「イノベーションのジレンマ」となります。
「イノベーションのジレンマ」攻略方法

破壊的イノベーションが発生していないときは、持続的イノベーションを継続することが企業の成長とっては正解。
余計な事をせず、本業に専念してくださいとのこと。
では、破壊的イノベーションが発生した時、クリステンセン氏はどうすればいいと提案しているのか?
ひろすが印象に残った物をひろってみました。
破壊的技術が出現したとき、長期戦略に重要であると顧客と組織に伝える
この方法は、以下の点で経営者にとって強力なリーダーシップが必要となるので難易度が高くなると述べられています。
- 破壊的技術への投資に、いままでの持続的イノベーションのルールを持ちこんでしまう。例えば、失敗に対して厳格な罰則を適用してしまう、過剰なコストの投入、既存の顧客のニーズに無理やり破壊的技術を合わせるなど。
- いままでの成功の方法が新しい市場では通用しない場合があることになかなか気付けない。
- 市場規模が小さくなるので、大企業では維持するための利益が出せず、市場規模が大きくなるまでガマンが必要になる。やはり顧客と社内組織から抵抗される。
- 別動隊を編成するのであれば、今の組織から地理的ににも離れた場所を拠点とする。
ただ、成功事例はあるので本書を参照していただければと思います。
独立した組織を作り、破壊的技術を必要とする新しい顧客の中で活動させる
これは本書で頻繁に出てくる方法でクリステンセン氏マジおすすめのご様子。
破壊的技術に取り組む企業を買収する。株式に投資して親会社になる。
理由は
- 社内や顧客を説得する努力より楽。
- 市場規模に見合った収入と組織で無理が少ない。
- 大きな資金力が必要ない
- 失敗しても親会社の損失は軽い
独立した新しい組織出来たら、その組織が無理しない程度のプレッシャーを与える必要もある。
大企業としても無理が少なく、独立した組織、破壊的技術に取り組む企業にとっては立ち上げ初期の資金が少ない時に協力を受けることができてお互いWin-Winかと。
成功事例の記載も多々あるので本書をぜひご参考。
破壊的技術かどうかを見るポイント
それが破壊的技術かわからんけれども、これはと思ったものがあれば下記を確認する。
- 利用客の意見を聞き
- どんな風にその製品を使うのかを注視して
- さらに今後性能の向上がみこめるかどうか?
これが判断材料になると述べられています。
最後に
本書本文では「イノベーションのジレンマ」と発生した後の結果について、豊富な事例をもとに説明されています。
30年近く前に発刊されたにもかかわらず、大企業が倒産や縮小していくのに会社自体にすべての問題があるわけではという分析がとても斬新に感じます。
それに対する対策もしっかりと本書にはまとめられていますので、是非一度本書を手に取って読んでみてはいかがでしょうか。